【理事会声明】

「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組み」導入の提案の撤回を求める

 2018年4月25日に開催された財務省財政制度等審議会財政制度分科会において、「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組み」が提起された。これは、国民皆保険制度の持続可能性を担保するために、今後の医療費の増加について保険給付率の調整、すなわち、患者負担の引上げにより対応するという趣旨である。この提起は、いつでも、どこでも、誰もが、必要な医療を十分に受けられるという公的医療保険制度の原則を脅かすものであり断じて容認できない。
 分科会資料によると、この仕組みは次のように説明されている。すなわち、「経済成長や人口動態を踏まえ、支え手の支払能力を超えるような医療費の増加があった場合に、ルールに基づき給付率を自動的に調整する仕組み」であるとしており、医療費の増加には給付率の自動調整、つまり、患者負担の自動的な引き上げにより対応するというのである。なお、分科会資料では同種の制度として導入されている公的年金の「マクロ経済スライド」を参考に挙げている。これは、年金被保険者数の減少率や平均余命の伸びに応じた一定の割合(スライド調整率)を年金の伸び率から自動的に差し引く仕組みであり、この制度を参考にして医療保険の給付率を引き下げていこうというのである。
 公的医療保険は、すべての国民の健康権を保障するための制度であり、その意味で国民の拠出については、応能負担原則が徹底されなければならない。このたびの給付率自動引下げは、この原則に真っ向から反するものであり、患者負担引上げに耐えられる患者のみが医療を受けられる制度へと変質させることにつながる。この間の度重なる患者負担増による受診抑制に起因する疾病の重症化が深刻になっている今日、必要とされる施策は、患者負担軽減と公費拡充である。
 憲法25条2項は、国の社会保障における「向上及び増進」の義務を高らかに謳っている。医療費の増加分を公費拡充で対応するのではなく、患者負担に転嫁する仕組みの導入を許すわけにはいかない。我々は、地域医療を担う医師・歯科医師として、政府・財務省に対し「給付率自動調整案」の撤回を求めるとともに、今後も患者・国民の健康と生活を保障する社会保障制度実現に向け、全力を挙げることを表明する。

2018年5月18日
石川県保険医協会 理事会