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「持論」 … 『石川保険医新聞』第450号主張欄 (2009年10月号)

 アンケート、とりわけ為政者の行うそれは、都合のよい世論形成のために行われることを心しておかなければならない。
 厚生労働省がまとめた2007年度終末期医療調査の結果が先般発表されたが、「余命6カ月以内の末期状態になった場合、延命治療を望むか」というアンケートに対し、数年前に比べてそれを望まない人が増え、とくに医療関係者において顕著であったという。ここでは「あなた自身が望むか」と問うているのがトリックであることを見破らなければならない。「延命治療は必要か」という客観的な問いではなく、「望むか」という主観的な質問である。「あなたは望むか」という一見個人的な質問は、自己決定・自己責任が重要視される時代だから、きわめてリベラルであるように見えてしまう。自分自身のことだから、誰にも干渉されずに何を答えてもよい、という油断を回答者に与えているのがミソである。そもそも延命治療を受けたい人などいるはずがない。

厚労省アンケートに見える
末期の延命治療を望むか
医療費削減の世論形成

 「望まない」という回答には、延命治療を受けざるを得ない状態になってしまうことを「望まない」という誘導がすでにある。
 この理屈を分かりやすくするために、延命治療を「生活保護」に置き換えてみるとよい。自分から進んで生活保護になりたい人は多くはないはずで、そうなるくらいなら死んだ方がましだとすら思う人も少なくないだろう。しかし、延命治療も生活保護もそれがなくては生きていけない人たちがいることは分かっているはずだ。それなのに、どうして私たちは「自分だったら望まない」「死んだ方がまし」だと思ってしまうのだろうか。ここに為政者の意図がある。「生活保護を望むか」と問えば、望まない人の方が多いだろうから、生活保護を減らそうという世論形成ができるかもしれない。同じ理屈で、延命治療にはお金がかかるので、その部分の医療費、あわよくば医療費全体を減らすための世論形成をしていることが見えてくるではないか。
 社会保障削減の世論形成に加担しないよう気をつけたいものである。
<石川保険医新聞 第450号より転載>


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