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<会長談話>
2008年8月22日
福島県立大野病院産婦人科事件の判決を受けて
石川県保険医協会
会長  西田直巳

 8月20日ついに大野病院産婦人科事件の判決が下りた。周知のごとく癒着性前置胎盤という極めて稀な症例で起こった不幸な事件である。多くの医療関係者の悲鳴にも似た憤りを集めたこの事件の判決が産婦人科医師の無罪で結ばれたことは素直に喜びたい。
  しかし、この事件を振り返るとき、失われたものの多さに慄然とせざるを得ない。地域産科医療の崩壊、誠実で有能な医師への謂われなき攻撃、失われた膨大な時間と費用、更には拭い難き医療者と患者間の相互不信。
  この裁判で得られたものは一体何だったのだろうか。
 今多くの医療者はこう言う。「最善の医療を行っていても予想外の結果は常に起こりうる」「妊娠分娩という行為そのものが決して100%安全なものではない」その指摘はすべて正しい。それでもなお、一人の命が失われ、残された家族の傷が今なお癒されていないという現実に、我々すべての医師がきちんと向き合うべきだと敢えて言いたい。
  家族を非難することは何の解決にもならない。医療は医療者と患者との相互の理解がなければ決して成り立たないものだ。警察・検察の行為は論外としても、そこへ辿り着くしかなかった状況の検証こそ急務だろう。
  最悪の結果に遭遇した医師に十分なインフォームド・コンセントを要求すること自体、非現実的な話である。ならばこそ患者と病院の間を埋める人材、システムの構築こそが必要不可欠である。
 今中立的な医療安全調査委員会の検討が急ピッチで進められている。未だ完全体にはほど遠い内容という指摘も多いが、この制度が新たな展開を見せることを期待して止まない。更には健康被害を受けた患者・家族を物心両面でサポートするシステム、無過失補償制度の整備なども必要と考える。
 今回の不幸な事件を教訓として、医療者と患者が共同して新たな医療体制を生み出すことが失われた命に報いる唯一の方法であるに違いない。


 
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