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<見解>
今回の採血器具問題に関する石川県保険医協会の見解(2008年6月12日)
 今年4月、島根県益田市の診療所で、血糖検査のため微量採血器具を使用した際、採血の針が自動交換されると誤解し、複数の患者に同一針を使用する事件が起こった。結果としてB型やC型肝炎ウィルスの感染が疑われるに至っている。
 さらに事件はそのままでは終わらず、採血針の周辺部分がディスポタイプでないものに関しては、針周辺のプラスチック部分を含めて、交換せず使用していることが問題になってきている。このタイプの採血器具は、自己血糖測定のみならず、医療機関の病棟・外来でも広く使用されており、現在、国が全国的に実態調査をしているところである。
 こうした中で、議論は静脈採血の際の採血針(ルアー)とホルダーの問題にまでおよび、ルアーのみならず、ホルダーも採取血液によって汚染される可能性があり両方使い捨てにするべきとの話が出てきた。
 3年前、厚労省は採血器具の使い回し禁止の通達をすでに全国に発信済みである。ただ、これらの通達は、一部の医療機関には、周知されていたが、開業医など多くの医療機関では、通達があったことさえ知らず、徹底を欠いていたことは否めない。

 今回の事件で最も大切なことは、患者の利益が何より守られることである。その上で、もう一つ求められるべきは冷静な議論だろう。確かに、あらゆる危険を排除するために、すべての採血器具は、セットで廃棄されるべきである。しかし、そのためのコストはどうするのか。そこから生じる膨大な医療廃棄物は、どう処理するのか。議論は、そうしたことにまったく触れていない。医療環境が年々厳しくなる中、一方で、当然のごとく要求される安全のコストを医療機関にだけ押しつけるのは、それ自体リスクを増大させる。
 ルアーとホルダーの関係にしても、ホルダーの継続使用によって生まれるリスクがどれほどのものなのか、まったく検討されていない。医療にとって、あらゆる場面でリスクは存在する。その費用対効果をタブーとすることなく、国民的議論をするべき時代なのだ。
 そうしなければ、何の解決にもならない。
 無論、今回の事件で最も問われているのは、われわれ医療機関の姿勢である。患者を前にして、常に最新の情報を共有し、真摯に向かい合う姿勢があれば、事件は防げたはずだ。その意味で、反省すべき点は多い。
 こうした事件を再び起こさないために、会員には常に最新の情報に注意を払って欲しい。また、厚労省には情報をできるだけ正確かつ迅速に伝える手段を二重三重に講じて欲しい。保団連、医師会が、その中で果たすべき役割も自ずから生じてくるだろう。そして、そうした対策と平行して、これからの医療の安全性をどう構築するのか、その範囲、限界を費用を含めて議論する環境の整備を三者に要望するものである。



 
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