喜多徹(野々市市・内科)

 「あの人は、華がない人だ」。保守の重鎮亀井静香氏は、ある雑誌で新首相菅義偉の人物像をズバリ言ってのけた。10月に入り、新内閣が新しい学術会議委員について、同会議が推薦した者のうち5名の任命を拒否したとのニュースが飛び込んできた。拒否の理由は明らかにできない、総合的俯瞰的に判断したと。僕はすぐに、1930年代の滝川事件、美濃部達吉の天皇機関説事件などが頭に浮かんだ。学問の世界への政治の介入は、戦争という最悪の事態に繋がった。なぜ日本国憲法23条に「学問の自由」がわざわざ書き込まれたか、その意義を考えてもらいたい。管新首相は「華がない」どころか、暗く、自由にものが言えない時代への先導師となるのではないか。そしてやがて、新たな戦争に巻き込まれていくのではないか。日本の将来を考えるととても憂鬱な気持ちになる。

 冬場のインフルエンザ流行期に備え、厚労省は今までの保健所を中心にしたCOVID-19の検査体制を、かかりつけ医など医療機関中心に実施し、その情報を関係者で共有するシステムに移行すると発表した。さて、そうなると個々の医療機関の対応は、どうするかである。COVID-19への対応を開業医中心に見ると、本当に千差万別である。ゾーニングを完璧にして、ほぼ完璧な装備で検査を積極的に実施しているところもあれば、玄関に「発熱患者はお断り、保健所に相談してください」と張り紙をしているところもあるそうだ。それぞれ個別事情があり批判などできない。当院でも、一応行政検査の集合契約に応募したが、ゾーニングが完璧にできない、他の患者、スタッフ、自分自身に対しても十分な予防対策が取れなくて、積極的に疑い患者を受け入れる体制ではない。それでも地域医療をになうかかりつけ医として、何らかの貢献をしたいとの気持ちはある。悩ましい限りである。

 10月に入ってすぐ、事務担当から「レセプト電算処理システムコード」の入力に関して「よくわからん」との悲鳴を聞いた。もちろん現在では、ソフトウェア会社に問い合わせ、入力の試行錯誤を繰り返し、何とかできるようになった。それでも当月分はどれだけ返戻があるか心配なところである。これは今年の4月から決まっていたことであり、貧弱な事務体制が一番の問題ではあると承知している。しかし、ベンダーにしても憂鬱な問題だそうで、ユーザーが分かりやすく間違いなく入力できるプログラムにするために、懸命に改良中とのことである。ユーザーにとっては、自由に文章を加えていた従来のコメントとは異なり、厳密に定義されたコードをレセプトに書く必要があり、もはやコメントというより点数計算の一部と考えるほうが妥当ではないかとの、開発者の本音を聞いた。まあ、どう考えても入力に関して明らかに手間が増えるのであり、それなら保険医協会・保団連は「電算処理システムコード入力加算」などを要求してもよいのではないかと思うのである。

 以上、10月に入ってからの三つのメランコリックなことを書いてみた。